大石さんは大真面目だ。ふざけているわけではない。真剣に、私のためにこの提案をしてくれているのが分かる。

「…だからって、何で大石さんが私の彼氏になるんですか」

「沙耶香ちゃんは、彼氏でもない人に甘えたり頼ったりできる?」

…う、彼氏だった加賀美さんにも甘えられなかったのに、それは出来ない…

「ただの飲み友達としての俺に、甘えたり出来る?」

…それも出来ない…

いよいよこの提案に逆らえないのでは…悟りながらぐうの音も出ないでいると、

「沙耶香ちゃん、前から俺には結構ズバズバ遠慮なく物が言えるだろ?だから感情を出すとか甘えるとかしやすいと思って。適任じゃない?」

そう言ってニヤリと笑う。
確かにそうなのだ。隼にぃの店で会う度会う度違う女の人を連れていた大石さんに対してマイナスの感情から入っている分、割と仲良くなった後も言いたいことは遠慮なく言える関係だったと思う。
隼にぃの友達というのもあるだろうけど。じっと考え込んでいると、

「それとも他に適任者、いる?」

と聞かれた。
…いない。そんな人はいない。
というかそもそも好きでもない人をそんな理由で彼女にするとか、大石さんは正気だろうか。