愛しても、いいですか

大石さんの声が、すごく冷たい。

「…だとしたら、どうしますか?」

静かに、でも一触即発の雰囲気を纏って向かい合う2人。

「…沙耶香ちゃんのこと、泣かせる奴は絶対に許さない。慎太郎くんが沙耶香ちゃんを幸せに出来ないなら、俺がもらうよ?」

そう言って慎太郎を壁際に追いやり、慎太郎のネクタイをぐいっと引っ張って凄む大石さん。

「俺の方が沙耶香ちゃんのこと、幸せに出来る。俺の方が、沙耶香ちゃんを…愛してる」

…静かに、静かに空気を震わせて放たれたその言葉は、真っ直ぐに私の耳にも届いた。

…え…?
愛してる…?

すると、ふ、と慎太郎の静かに微笑む気配がして、次の瞬間には、

「…だってさ。沙耶香、ちゃんと聞いてたか?」
と、私のいる路地の入り口を見やる。

大石さんもハッ、となり、慎太郎と同じように私の方に顔を向けた。

「…あ、えっと…」

「…沙耶香ちゃん…?」

大石さんが目を見開いて驚いている。

慎太郎に呼ばれて来たとは言え、盗み聞きしてしまったような形で、ちょっと気まずい…

「…慎太郎くん、これはどういうこと?」