愛しても、いいですか

コンコン。
ノックすると、どうぞ、と中から懐かしい声。たったの2日聞いていなかっただけのその声に、とくん、と胸が反応する。

ガチャ、と重厚な扉を開けると、私の姿を見た大石さんが、

「…沙耶香ちゃん…!」

と駆け寄って来ておもむろに私を抱き締めた。

「…ちょっ…!大石さん…!」

ドアの横にはいつかもお会いしたあの秘書の人もいて、顔色一つ変えることなく私たちを見ている。

「…ここ、会社ですけど…!」

何とかそう言う私にはお構いなしに、

「沙耶香ちゃん無事で良かった…!自宅にも帰らずにどこ行ってたの!」

と、まるで迷子の子供を見つけたお父さんのようなテンションで抱き締めている私の後頭部を撫でる。

「…え、えっと…ゆ…し、慎太郎の家に…」

危なかった、危うく由紀って言いそうになってしまった…
とりあえず慎太郎と付き合うことになったと出て来たのだから、慎太郎の家ということにしておこう。

すると私の頭を撫でていた大石さんの手がピタリと止まって抱き締めていた腕を解き、私の肩を掴んで私を覗き込む。