「期間限定彼氏で同居ね…」

少し考え込むように、そして意味深に呟く。

「…今日一緒にいた人、本当に婚約者なの?」

「…うん、受付の子が言ってたから間違いないと思う…」

ふーん、と呟いて、沙耶香は大石さんの家、出るの?と聞く。

「…うん、婚約者がいるのに一緒には住めないからね…」

「…じゃあさ、俺と付き合うことになったってことにして出て」

怪訝な顔で隣の慎太郎を見やる私に彼は慌てて、

「実際付き合うわけじゃなくって!もともと好きな人が出来たら出て行くってことだったんだろ?まあ、悪いようにはしないしないからさ」
 
最後に悪役みたいなセリフを吐いて悪戯っぽく微笑んだ顔は、あの時の面影を残していた。

その後、涙の止まらない私の横で何を言うでもなくそっと寄り添ってくれていた慎太郎。
ようやく涙も枯れてきた頃、私のお腹がぐぅ、と鳴った。

「ははっ、飯、食いに行くか?」

「…うん、行く…ラーメン食べたい…」

食欲あるなら大丈夫だな、そう目を細めて私を優しく見つめてから、よし!と立ち上がり、来た道を戻って2人でラーメンを食べてから別れた。