翌朝目が覚めるとそこに大石さんの姿はなく、私は昨日大石さんのベッドに入ったままの、全く乱れた様子のない部屋着にしっかり身を包んでいた。

…何もなかった。いい歳した男と女が同じベッドに入ったにも関わらず、何もなかった。

その事実が、私と大石さんが期間限定の偽りの関係だということをまざまざと突きつけられた気がして辛かった。

いっそのこと身体だけの関係でも…と不毛なことを考えていた自分がいて、ふ、と笑ってしまう。

大石さんは今日は朝から仕事があると言っていた。
ふと、ベッドサイドのチェストにメモが置いてあるのに気づく。

大石さんらしい、端正な整った字で、

『昨日は沙耶香ちゃんのおかげでぐっすり眠れたよ。ありがとう。仕事に行ってくるけど、沙耶香ちゃんはゆっくりしててね』

そう書かれていた。

ぐっすり眠れた…うん、それが目的だったんだけど、そうなんだけど、ぐっすり眠れたって言うのも女の立場として考えるといかがなものか…