おずおずとベッドに潜り込み近くまで行くが、恥ずかしくて顔がまともに見られないので、くる、と大石さんに背を向ける。

ふっ、と大石さんが笑ったのが背中越しでも伝わって、次の瞬間には、

「捕まえた」

そう言った大石さんの腕が私のお腹当たりに回り込んで、私を背中からぎゅ、と抱き締める形になった。

2人の間の距離が1ミリもない。それくらい密着している。

「…沙耶香ちゃん、いい匂い」

そう言ってくんくん私の髪の匂いを嗅ぐ大石さん。
くすぐったくて思わず身をよじる。

すぐそこに感じる大石さんの声。言葉と一緒に吐き出される吐息。伝わる心臓の音。体温。

その全てに私は嫌になるくらい反応してしまう。

…覚悟はしていた。
大石さんと同じベッドに入って何もない、なんてことがあると思っていない。

ただ抱き締めて眠るだけ、それで済むはずがないと。

…でも、本当に大石さんは私を背中から抱き締めたまま、何もすることなく眠りについたのだったー