「体調が悪くなったら休むこと。遠慮せずに連絡すること。」
「はい」
会社までの車の中では悟がいつものように綾乃に無理をしないように忠告する。
今は綾乃も自分だけの体ではないと自覚していて、十分気を付けていることを悟は知っている。それでも言わずにいられない。

「今日のおやつはおからクッキーとサツマイモチップス。よかったら食べてな」
「ありがとう。楽しみ。」
思うように一度に食事をとれないことが多い綾乃。特に重たい食事は口にすることが難しい。
悟が毎日工夫して作ってくれるおやつは手軽でつわりのおともに最適だ。
「飲み物も」
「ありがとう」
会社の裏で綾乃が車から降りるときに悟はお弁当やおやつ、飲み物の入っているランチバックを車から降りて綾乃に手渡す。

「気をつけてな。」
「ありがとう。悟も気を付けて。」
「ありがとう。転ぶなよ。」
綾乃が会社の正面に曲がっていくところまで悟はいつも車から降りて見守っていた。