転性悪役令嬢~昼は少年、夜は少女~破滅フラグ回避頑張ります

「ふふふ、でも、私は幸せだから大丈夫よ、クレア」
「うん、そうよね。そう。とてもいい子たちばかりだもの。公爵家の将来は安泰ね。それに、男の子なら、うちのマルヴェルと同じ年だから、いいお友達になれるわね」
 クレアとお母様が呼んだ女性の後ろからぴょこんと黒い頭が飛び出した。
 黒髪に黒目っ!うわー。顔ものっぺりして日本人っぽいっ。なんか落ち着く顔だ。
 乙女ゲームらしいイケメンぞろいのこの世界において、なんと平凡な顔なのだろう。とはいえ、十分かっこいい顔してるんだけどね。日本でいうと、クラスで1,2を争う人気者レベルには。
「ほら、マルヴェル、リザーク様にご挨拶しなさい」
「お、お誕生日おめでとうございましゅリザークしゃま。俺……あ、うんと、僕はラクテ・マルヴェルで、4歳です」
 ラクテといえば、侯爵家だったはず。
 ぺこりとマルヴェルが頭を下げた。
 ふふ。後ろの髪に寝ぐせ発見。
 か、か、かわいいっ。
「僕はリザークでしゅ。様はいらない。マルヴェル、友達になろう」
 つい、礼儀作法とかいろいろ忘れて、右手を差し出す。
 挨拶が握手なのはこの世界では普通じゃなかった。うっかりしてたー。手を差し出すイコール、手をつなぐ以外の使用法はないのである。
「うん」
 差し出した手を、マルヴェルが握る。
「あら、よかったわね。さっそくお友達ができたのね。リザーク、もうお披露目は済んだのだから、遊んできていいわよ」
 やった。もう愛想笑いを振りまく必要ないんだ。
「じゃ、あっち行こう!」
 そのままつないだ手を引っ張って会場を離れる。
 バラ園についたところで、手を離して、マルヴェルの手の平を見る。
「何?」
「すごいね、マルヴェル、これ、豆がいっぱい」
 手を握ったときに気が付いた。マルヴェルの手の平は硬くて、豆のごつごつがあった。
 まだ私と同じ4歳だというのに。
「俺、騎士になりたいんだ。だから、剣の練習するのは当たり前だろ?」
 マルヴェルの目がキラキラと輝く。
「そっか、騎士になるんだ」
「そう。それで、いつか、悪いドラゴンをやっつけるんだ!」
 うん。この世界にはドラゴンいませんけどね。子供向けの絵本には出てくるけれど……。
 ふふふと思わずほほえましくて笑ってしまう。
「なんだよ、俺には無理だって言うのか?」