転性悪役令嬢~昼は少年、夜は少女~破滅フラグ回避頑張ります

「親切?馬鹿にしてるんじゃないんですか?」
 つい、つっかかるような言葉を口にしてしまった。
「悪いが、私は手加減という者ができない。相手が1年だろうが、剣の初心者だろうが……怪我をしたくなければ、試合に顔を出さないのが一番安全だ」
 なんだ。本当に親切で言っていたのか。
「僕、1回戦勝ちたいから、逃げないよ」
 試合開始の合図がなる。
 木刀を相手に向けて構える。
「ふん、構えだけはいっちょ前だな」
 ブランカが口を開く。
 けれど、それにこたえる余裕はなかった。神経を研ぎ澄ませ、攻撃に備える。
「怪我をしてもいいと言うのなら遠慮なくいかせてもらう」
 と、ブランカが動いた。
 あ、れ?
■52
 まるで、ブランカの動きがまるでスローモーションのように見える。
 いや、決して遅いわけじゃない。兄1ほどではないにしろ、兄4程度にはスピードがある。
 神経を研ぎ澄ませていたからだろうか。
 ああ、ここだ……。
 どこをどの方向にどんな力で打てばいいのか、ぱぁーっと啓示を受けたように頭の中に浮かんだ。
 不思議な感覚。
 そう、繰り返し繰り返し見たあのビデオの中の達人が、自分の中にいるような感覚。
 そうか。
 ブランカの動きが剣道のそれに似てるんだ。
 カッっと、ブランカの剣をいなす。
 その瞬間、ブランカは繰り出した剣の勢いそのままに斜めに体制を崩した。
 ああ、これだ。相手の力を利用して体制を崩し、そのすきに攻撃する。
「こてぇーーーっ」
 思わず、発声する。
 そして、見事に、私が繰り出した小手狙いの木刀は、ブランカの手を打った。
 籠手で手を防御もせず、竹刀ではなく木刀で思い切り叩かれれば、そりゃ、剣を握っていられないよねぇ。
 からん、からん、からん……。
 ブランカさんの持っていた木刀が地面に落ち、2度ほど小さくはねて転がった。
 しぃーん。
 あれ?
 勝負がついたんじゃないの?
 えーっと、勝者誰々みたいな、そういうのないの?
 立っていたはずの審判を見る。
 おーい、旗をもった審判、お前、どっち見てる。そっち、第3競技場でしょっ。
 そんなんで審判務まるの?
 ブランカさんが落ちた木刀を拾う。
「私の負けだ。すまなかった。完全に侮っていたが……」
 木刀の持ち手を渡しに向けてブランカさんが差し出した。
 受け取れってことかな?