転性悪役令嬢~昼は少年、夜は少女~破滅フラグ回避頑張ります

 開始の合図とともに、70名の選手がコートの中になだれ込む。
 司令塔はあらかじめ作戦通りに選手が動いているか、他のチームが想像通りなのか。イレギュラーが起きれば作戦を変え、下に控えている伝令に伝える。
 伝令は、笛だとか太鼓だとか、時には戦場となっているコートの周りを駆け回り選手たちに指示を伝えていく。
 きっと、兄2はあの司令塔とかの選手だったんだろうなぁ。と、戦術に関しては天才的な兄2を思い出す。
 すでに、将軍補佐官として働いてるくらいだからなぁ。普通は、隊長補佐だとか騎士隊長補佐だとか、もう少し小さな団体の補佐として戦略を組み立てていって、戦果を挙げて出世していくんだけど。……まぁ、公爵令息だからある程度忖度はあったのかもしれないけど……。能力が認められているのは間違いない……はず。まぁ、補佐官一人じゃないからね。修行がてらって意味合いもあるんだろうけど。
 おっと、なんか考え事をしてる間に、選手が減り始めてる。
 ん?
 なんか、動きがおかしい?
 Bクラスの選手に戦いを挑まれるFクラスの選手。
 あっさり背中を見せ、逃げ出す。
 え、逃げる?あ、うん、まぁ、それも戦略なのかもしれない。
 で、逃げた先にはSクラスの選手がいる。Sクラスの選手はマントをつけているので分かりやすい。
 Fクラスの選手は、Sクラスの選手に剣を向けられると、模擬剣を地面に置いてコートを出ていった。
 これ、一見すると、Sクラスの選手に勝ち目はないから降参してるように見える。
 ……でも、おかしいよね?
■41
 だって、Bクラスの選手からは逃げたんだよ?
 逃げて、逃げて、逃げてってドッジボールだって逃げ役、逃げ切り役もあるんだもん。この戦いだって、最後に残ってる人数の多さが勝敗に関わってくるなら、逃げ切り役になったっていい。
 逃げるなら……なぜ、わざわざ目立つマントをつけたSクラスの選手のところへ走っていくのか。
 勝ち目がない相手のところに逃げていくのはおかしい。
 ただやみくもに逃げ出してそうなったのかとも思ったけれど、2人、3人と同じような状況の選手を見てしまえば、そうじゃないことが分かる。
「Fクラスの選手はSクラスを勝たせようとしてる?」
 思わずつぶやけば、フレッドが頷いた。
「そうみたいだね」
「ずるいっ」
 憤る私に、フレッドがふっと笑った。