転性悪役令嬢~昼は少年、夜は少女~破滅フラグ回避頑張ります

 オタクなめんな。好きなビデオは何十回何百回エンドレスで見られるんだよっ。先生にビデオ借りて(その時代はビデオだった)友達にダビングしてもらって(ビデオ2台いる。社会人オタクが兄か姉にいる友達は当然ダビング環境完備してた)何度も見た。
 あ、当然だけど、当時剣道アニメが大ブームでね。授業で剣道やることもあって、自分にもできるんじゃないかと、繰り返し見た。
 当然、できるわけもなかった。でも、中学んときはなんかできるかもしれないと夢を見てた。
 今は、あの繰り返し見た達人の腕のすごさが分かる。一朝一夕で真似できるものじゃないことも分かる。
 だけど、中学のあの時と違う。体は動く。
 4歳から毎日欠かさず7年間トレーニングを続けたこの体なら。毎日剣を握ってきたこの体なら……。
「いくよ、リザ」
 兄の木刀に、イメージを繰り返した動きで対応する。
 カッ。
 木と木がぶつかる音。
 手に響く衝撃。
 ダメだ、失敗だ。まだ当て方が悪い。
■33
「次、お願いしますっ!」
 兄の早い剣。剣道と違い、もっと自由な軌道。竹刀よりも重たい木刀。
「はっ」
 ガツンと響く衝撃に、木刀を取り落とす。
「まだです……」
 男の体なら、これくらいで木刀をはじかれたりしないのになんて思わない。今のは私の剣さばきが未熟だから。
 力を上手に流せなかった。まともに食らった。これじゃぁ駄目だ。
 ふぅと、息を吐きだし、もう一度挑戦。

 はー、はー、ぜーぜー。
 どれくらい続けただろうか……、全然駄目でした。難しい。めっちゃ難しい。
「今日はこれくらいにしておこうか」
 兄1が、地面に倒れ込んだ私に声をかける。
 うん、そろそろ限界です。
「え?」
 背後で声が上がる。
「俺、俺の番は?」
 ……。兄4……そういえば、ずっと近くで素振りしてましたね。
 まさか、自分のトレーニングしてたんじゃなくて、私と稽古をする順番待ちをしていたのですか……。
「リザはもう無理だろう?私が相手をしよう」
 と、兄1が兄4に笑いかける。
「えー、リザと一緒がいいのにな。しゃーない。兄貴、今日こそ負けないぞ!」
 と、二人が打ち合いを始めました。
「お疲れ様さま。リザ。紅茶でも飲みましょう」
 おっと、お母様ずっと見てたのですか。お父様も、手が止まってます。書類、うん、全然進んでないですね。