ドヤ顔を見せる母。
「は、はい!おかあしゃま、リザークってとってもかっこいい名前です!」
 お父様が立ち上がる。
「よし、ではすぐにでも呪いをかけてもらおう!」
「そうね。誕生日会に間に合うように今すぐ呪術師を呼びましょう」
 この世界に一般的に魔法はありませんが、呪いはあります。
 眠りの森の美女が眠らされたり、かえるの王子様だとか、白鳥の湖だとか、童話に数々出てくる悪意のある魔法だけあるんですよ。魔法とは言わず呪いと呼ばれてます。
 カエルや白鳥に姿を変えられたら大変だけど……、悪役令嬢を辞められるんなら呪いに感謝!
 魔法がないんだから、鑑定魔法で見破られたり、魔力を感じるとかで怪しまれたりとかもナッシングです!
 さいっこーだぜ!
 ビバ呪い!
 ちなみに、呪いをかけるのは通常悪者が大金詰んで暗殺代わりに行うくらい物騒な行動ですが、実はすんごい大金積むと「美女になる呪い」とか「女にもてすぎて困る呪い」とかもあったりするので貴族の一部は呪術師とつながりを持っている。
 ふふふ、やったぜ!呪いで、私、はれて身も心も男になります!
 ぐ、ふふ。
 これで、これで、悪役令嬢卒業なのだぁ!ははははっ!
 死ぬもんか!

 陽の呪術師による呪いにより、私、無事に男の子になりました。あれが生えました。きゃっ、新鮮。
 これで無事に、悪役令嬢生活は終了です!
 とはいえ、世の中そんなに都合よくはないわけですよ……。
「ふふ。嬉しいわ。リザ。一人で2度おいしいんだもの。かわいいかわいいリザ」
 お母様が嬉しそうにドレスを私に着せています。
 陽の呪術師の力は陽が出てる間のみ。太陽が沈むと、女に戻っちゃうんだよね。そう、陽が沈むと令嬢に逆戻り……。
 白鳥の湖とかもそうだったよね。夜だけ人の姿に戻るとか言うあれだ。呪いを解くには、王子様のキスだっけ?それは白雪姫か?眠れる森の美女だっけか?
 とにかく、残念ながら呪いも万能ではなく、夜になると女に戻っちゃうんだよ。
 うぐぐ、絶対に女だとばれないように生きていかなければ!でなければ、悪役令嬢としての役割を負わされ、死亡エンドが待っている……。
■3
 本当は念のため、攻略対象たちとも距離を置きたいんだけどね……。
「リザ~!今日もかわいいねっ!」
「流石は僕の妹だ」