転性悪役令嬢~昼は少年、夜は少女~破滅フラグ回避頑張ります

 女の体んときは鍛えてないからそうなのかと思って腕立て伏せとかやってみたけど……筋肉がなかなかつかないんだよ。もう、なんていうか、男の体のときとどうしても比較しちゃって、努力が無駄みたいな気持ちになってあきらめた……。
 で、あと立っているのは……。
 私ですね。ええ、汗かいてますが、息は乱れてません。
 それからマージ。
「おい、お前ら体力なさすぎねーか?明日から授業の前に走り込みでもするか?」
 とか、物騒な提案をし始めてる。いやいや、何言ってんの、こいつ。
「そうですねぇ。30分ほど走ると目が覚めて学業にも身が入るかもしれませんね」
 フレッドが、額に浮かんだ汗をどこから取り出したのかハンカチで拭いてにこりと笑う。これがほんとのハンカチ王子……。
 ……いくら立場は関係ないとはいえ、王子の言葉に逆らえる子供がいようか?
 否!
 普通に育てばいくら子供でも11歳にもなれば、王家に逆らっちゃなんねぇだと学んでいるのである。
 小さく頷く生徒たち。
「ああ、そうか、学業、勉強も頑張んなくちゃならないなら朝に体力使っちゃだめか。身が入るどころか、30分走ったら授業も聞かずに倒れそうなやつもいるぞ?」
 ……逆らった。王子に。
 マージ……お前……。
 自分の意見に賛同してくれた王子の言葉に逆らうとか、どういうつもりだよっ。
「そうですね。では、授業後みんなで走りますか?」
「夕日に向かってか!なんかかっこいいな!」
 かっこよくなんかない!っていうか、夕日?
 夕日ぃ?
 陽が沈むと、まずい。やばい。無理。
「ぼ、ボクは、早く家に帰らないといけないから、無理ですっ」
「なんだよ、付き合いわりぃな」
 マージが肩を組んでくる。うるせー。事情があるんだよっ。
■18
「兄たちが勉強を見てくれるんですっ」
 嘘じゃないよ。家に帰れば特訓が待ってるのである。陽が暮れて女になったあとは、お母様がレディ教育をしてくれる……いらないのにぃ。
「お、兄って、騎士団で最年少団長になるんじゃないかって噂されてるアルフ様か?いいなぁ、俺も一緒にリザークの家に行っていいか?」
 ……いいわけないだろっ。
「マージはクラスのみんなと走るんでしょう?それに残念ながら、家で待っているのは、別の兄ですよ」
 パンパンパン。
 手を打ち鳴らす音に、皆が一斉に黙る。