貧乏国の悪役令嬢、金儲けに必死になってたら婚約破棄されました【短編】

「もしかして、殿下って、あのお菓子を食べさせてもらってないのか?」
「クラスメートのみならず、他のクラスの人も興味を持った人には分け隔てなくお菓子を配ってましたよね?」
「おいしかった!シナモンっていうんですよね」
「あれからすぐに世の中に広まりましたよね」
「試食してくれてありがとうって後で感謝の言葉をいただきましたわ」
「恐れ多いですわよね。こちらこそ試食させていただきありがとうございますって。今では入手困難な高級食材として、隣国では金よりも高価だと言われているんですもの」
「そうそう、そのシナモンを使ったお菓子を、たくさん食べさせていただきましたもの」
 そうです。
 お菓子が好きそうな人にどんどん食べてもらって意見を聞いたんですから。
 ミリーさんにだけ特別に意地悪で声をかけたってことはなくて……。むしろ、意地悪したかったら声かけないですよ。
 あなたも食べたいの?差し上げませんわ。そのうち一般的に流通するでしょうから、買ってくださいませ。まぁ、買うお金があればですけれど。ふふふふふ。とか、意地悪ならそっち方向でしょう。

「それから、次だ」
 と、殿下がペラペラと日記をめくる。

『9月5日。まだ暑い日が続いています。リリアーナ様は、奇妙な何かを編んだようなソファに優雅にお座りになっておりました。周りにもその奇妙なソファや椅子が置かれ、人々が集まり談笑しております。あまりに楽しそうな様子に、少しだけ近づいたところ、リリアーナ様が見馴れない扇子のようなものを私に差し出しました。どうしてよいのか分からない私に「こうするのよ」と自分を仰いで見せました。私はとっさに、その場を離れるしかできませんでした』
 ん?
 それって、竹製品の試作品を学校に持って行ったときの話じゃない?
 奇妙な何かを編んだようなソファって、竹で作ったやつね。
 クッションほど柔らかくはないんだけれど、木で作ったものよりは弾力があって座り心地もいいし、暑い季節には涼しくていいんですよねぇ。で、評判を聞くためと、隣国との付き合いもある貴族や商人に広めようとして。
 ああ、あと、扇子のような物ってうちわだよね。
 うちわはたくさん試作品作って学校に持って行って、みんなに配りまくったんだ。
 だから、当然ミリーさんにも、あげるよと差し出した。