もうすぐ11月が来る。
悠里はめでたく来年成人式だ

10月の半ば金木犀の黄色いオレンジの花が街に匂いつける頃悠里はウキウキ桜祐との結婚話が持ち上がるはず。

今日は桜祐は加納本家に出向き
結婚の話を進めるため1人
乗り込んでいった。


「お爺様、お祖母様今日は
悠里との婚姻の事をお知らせに
参りました。
日を改めまして悠里と
ご挨拶にまいります。」

桜祐は加納家の座敷に座り
向かい合わせに座る
雪乃と一大に報告をした。


「まあっ‼決めたの桜祐
良かったワ」

ポッと嬉しそうな顔を
向ける雪乃とは反対に一大は目を瞑り納得しない様子をみせた。


「なあ、桜祐‼ 嫁を貰うのには
大賛成じゃ
しかし、もっと良い娘が良いとは
思わんか?
儂は・・・もっと躾の行き届いた
娘の方をすすめる。」


「あなた、桜祐が良いと言うん
ですから良いじゃありませんか?
悠里の何処が不満です?

料理も上手いそうですし
土いじりも好きと言って又私達
チューリップの球根をうえましたのよ。
躾もどこに出しても可笑しく
ありませんし・・」


「雪乃‼
ワシ達が居なくなったあとの心配
もしておるのだ
あの三上分家とは縁を切るべきだ‼」


「大丈夫です、俺がしっかり
しておけば済む話です。」


「悪い事は言わん‼
やめておけ、お前にずっと
許婚がいる話をしなかったのは
三上との縁談に反対していたからじゃ。

このまま無い話にしようと思って
いたのに、あっちから結婚詐欺
だと訴えるとか脅して来た。

お前の曾祖父さんの血判状も
あると言うし、まあ効力は無いだろ
うが、後々後腐れがあっては
とあの条件を出したんじゃ。

あんな親といたら
ケッの毛まで毟られるぞ!」

「悠里と上手く行かなかったら
諦めて見合いをと言う条件ですか?」

「そうだ、悠里も従うと言う
話はちゃんと録音しておる!
証拠は大事だからな!」

そう言うと一大は

「真壁、あれを」

一大の秘書真加部はA4サイズの
封筒を桜祐の座るテーブルの上に
置いた。

「なんですか?
11月一日グランピアホテル?って‼」


「見合いじゃ‼
会ってみろ‼」

桜祐は封筒を開け写真を見た。

緑の絞りの振袖を着た成程
美人で、じい様好みの物静かそうな
女性が写っていた。

「何の真似ですか?
悠里との結婚は決まってますし
見合いして何の意味がありますか?」

「フウ
桜祐、 早く安心させてくれんか!
悠里では加納家の嫁には
相応しくない‼
こんな年寄りをもう、虐めるな!」


「・・悠里との結婚は
2人の間で決まっています。
未だ婚約は悠里が卒業してから
と思っていますし
悠里が好きなんです。
お爺様お許しください。」

桜祐は頭を畳に擦り付け結婚の
許しを乞うた。


「ふむー💢💢
悠里が卒業?なら未だ時間は
あるな‼

もう一度考えてみろ!
儂は反対じゃ。
見合いは必ず受けろ!
会長命令だ‼」

一大は桜祐を、一睨みして座敷を
出て行った。


「あなた、あなた
もっと話を聞いてあげましょうよ。」
そう言いながら

雪乃も一大を追うように
居なくなった。


座敷にはポッンと桜祐と秘書の
真壁だけが残った。

シ━━━━━━━━━━━ン
としたテーブルの上の写真だけが
桜祐を見ていた。


「桜祐様、」

「うん?真壁も反対か?」

「いいえ、悠里様はよく出来た
お嬢様と、私も会長も分かって
おります。
でも会長のご心配も重々理解して
おるのです。

どうでしょう
お見合いされて会長を安心させて
いただけませんか?

それからお断りすれば
良いのですし、向こうから
お断り頂ければ宜しいでは
ありませんか。」



「・・・・う・・そうだな
見合い相手には断って貰える
ように頼めばいいんだな‼

分かった‼」
桜祐は名案だと思ってしまった。




「桜祐、どうだった?」
悠里は心配していたのか水色の
ストライプのシャッとジーンズを
着て不安そうに聞いてくる。

「あ、ああ、大丈夫だ…問題ないよ。」
桜祐はネクタイを外しながら
着替えを始めた。
一緒に居るけど一緒に住んでは
居ない。

桜祐の態度はやはり断られたと
言っている。


「そう ・・・良かった 。」
大丈夫の意味を理解した悠里は
昼御飯の用意を力無く始めた。

ピザを焼いて珈琲を沸かす
軽くサラダを作り目玉焼きを焼く


「桜祐、桜祐、ごはーん。」
こう言っても来ない時は


スーハ
「桜祐━━━━━━━ッ
ピザ焼けたω━━‼‼‼‼」

食い物の名前を言えば部屋から
でてくる。


「お┅━━━つ美味そ、美味そ」
子犬みたいに部屋から飛び出した
桜祐はぴょんぴょんしながら
かけてくる。

ピザのチーズとソースの焼けた
独特の匂いと、コーヒーの香りが
鼻を抜ける。


ω「ŧ‹”ŧ‹”悠里ホントに料理上手いな
ŧ‹"ŧ‹"ŧ‹"ŧ‹"🍕パクパク🍕パクパク」

「まあ、加納本家で叩き
こまれたからね。」


「本家で?実家じゃないのか?」


「あ、うん。
私、ずっと家政婦代わりだったから
親は私をボロ雑巾になる迄
こき使ってたから


あ‼

シャッアイロンかけといたやつ
あるから持って帰ってね。
今日のは後で洗っておくから。」


☕「おーお‼サンキュ〜」
桜祐は珈琲を飲みながら返事を
かえす。


「ん?🍕パクどうしたの?ŧ‹”ŧ‹”」


「俺が幸せにするからな‼パク」

「え~桜祐どしたぁ
いきなりの決意表明?」

「まあな!俺に任せとけ‼」




悠里が後片付けを始めると
仕事の残りを
片付けると言って桜祐は
又部屋にこもってしまった。

スーパーのバイトは夕方6時まで
「桜祐、バイト行って来るね!」

「おう、送るよ待ってろ‼」
慌てて部屋を出てきた桜祐に

「桜祐、あんなドデカい車は
目立ち過ぎ‼
チャリで充分、仕事してて
じゃあね~ばいばーい」

悠里は階段を降りマンションを
出た。

真向かいには加納一大所有の
マンションがドカンと立っている。

いずれは、桜祐か桜哉が所有者と
なるのだろう。
イケメンで金持ちで会社経営
そんな御曹司が悠里の物に
なるはずは無い‼

悠里は小さい頃から桜祐の嫁に
なるのだと言い聞かされて来た
自然とそうなる物だと信じて来た
しかしそれは加納家から
毒親の方へと金の流れを変える
バイパスに過ぎない。


これは間違っている。
自分の前に引かれたレールに
乗れるはずも無い・・ならば
一大の引いたもうひとつのレールに
乗るしか無いじゃないか!

19歳の世間知らずの悠里は
ド貧乏から引き揚げてくれた
桜祐の手を握り又桜祐を、泥沼に
沈める事はしたく無かった。

何処かで桜祐の手を離さなければ
いけない。

毒親が死ぬ迄結婚はしない
被害者は出したく無い‼
育ててもらった恩は
育ちながら返して来たつもりもある。
でも悠里は働きながら毒親に
15年間は仕送りをするつもりでも
いる。


「桜祐今から帰るよ。」
夜10時桜祐に帰るコールをする

「おお‼ お疲れぃ⤴」

桜祐から元気な返事が来る。

すると加納一大から電話が
入っていた。
悠里はビビりながら直ぐ
一大にかけ直した。


「お爺様こんばんは
悠里です。」


「ああ、悠里か‼

・・・・・・」


「あのぅ
御用でしたか?お電話頂いて
いますけど・・
何かありましたか?」


「う~む‼
お前の両親、三上の家から
1億円の要請があってな
かれこれ計算したらかなりの
額になっておる。」

ゲッ!!1億円吃驚」

「そうだ💢💢
1億円ではすまん、もう二、三億
行っておる!
会社が倒産しかかったりとか
従業員の給料とか
理由をつけてはむしり取りに来る
ワシらは何時迄三上分家に金を回す
のか、もう勘弁してくれまいか?」


悠里は青くなって申し訳無さで
いっぱいになる。

「ど、どうしょう。」

「悠里、儂は一億出す代わりに
お前との縁談を、破棄する条件を、
出そうと思っておる、
どうじゃ、お前の考えを、聞きたい‼
お前の親が返せる金額では無いんだ
悠里の考えひとっじゃ。」



「えっ、それって・・・・」


「桜祐を、諦めては
くれんか!」


「・・・・・・」

「マンションも出て行って
欲しいと思っておる。
勿論お前名義のマンションを
用意する。」


「え、あ、それは・・」


「もう4年も住ませているし
もう直ぐ悠里も、二十歳だ
責任取れる歳だ‼
急にとは言わん、追追考えては
もらえないか?」



「え・・っと、それは・・」

「桜祐の見合いの手筈は
整っておるしその話もしてある。」


「あ・・の桜祐さんは了承されたの
ですか?」


「ああ、真壁の話では
そう聞いておる。」

秘書の真壁さんが言うのなら
本当だろう。


桜祐が了承しているなら
どうにもならない話だ。

悠里がどんなに嫌がっても
仕方が無い。

「分かりました。
お爺様の仰る通りに致します。」

と答えるしか無いじゃない。