メガネをはずした、だけなのに


 職員室の出入り口で、気が抜けたように立っていたら知らない先生に注意されてしまった。

 こんなことではいけない、委員長なんだからしっかりしないと。


 声には出さないで、心の中で自分に向かって気合いを入れた。

 でも、頭の中で賢斗くんがピアノ演奏するショパンの曲が、繰り返し再生されている。

 また、ボーっとして気を抜くと誰かに注意されてしまうよね。


 気をつけようと思っていた矢先、階段の踊り場で誰かとぶつかってしまった。


「きゃ!」


 ごめんなさい、と頭を下げてすぐに謝る。

 相手が怒ってないことを祈りつつ、私はゆっくりと頭を上げた。

 プリント用紙を持つ手にも力が入ってしまう。


「痛いじゃないのよ!まったく!」


 相手は女子の先輩で、すごく怒ってるような言い方をしてきた。

 思わず怯みながら、相手の顔をよく見る。


「アンタか、マジで?」



 私がぶつかった相手は、梨木くんの彼女さんだった……