頭の中流れる民族音楽
ケルト音楽が幻想へ誘う
ーーさあさあ、今宵もいこうか


どこへ?
夜は寝る時間でしょう?
ーーいやいや。夜は夢見る時間さ。
いこうと思えば、どこへだっていけるのさ。
空に浮かぶ島、精霊の詠う森、水底の遺跡、食べられる鉱石がある街、満天の星輝く魔法都市にだって。


そんなのまやかしよ。
夢物語はもうおしまい。
ーー夢は終わらない。人が夢を想うのなら、夢をあきらめないのなら、続いていくんだ。
君は夢を、捨てた人かい?


あなたうるさいわよ。
捨てたというなら、どうだというの?
ーー人が一番いけないのはね、ばかばかしいことを信じないことさ。夢を疑う、あるわけないとね。それは自分の魂を傷つけることさ。どうせ無理だと投げ捨ててしまうくらいなら、いっそ愚者になってしまえばいい。


愚者になったら、みんなに笑われるわ。
ーーいいじゃないか。実に滑稽で。
物語はその方が深いし、面白い。私ならば喜んで愚者を演じよう。


貴方、変わってるわ。名前教えなさいな。
ーーいいだろう。教えるとしよう。




『自分』は『自分』でしかないのさ。