「やだ、放して!」

振りほどこうと腕に力を入れるが、逆に捻り上げられてしまう。

「良い宝石つけてるじゃねーか」

男は私の胸元に光る宝石を手に取った。
アズールがくれたネックレスだ。

「やだ、やめて!」

男は宝石を握り、ぐっと力を入れて引きちぎろうとした。
瞬間。
目の前をバチっと稲妻が走り、気づけば私の腕をつかんでいた男がその場に倒れていた。

「……え?」

何が起こったのかわからない。
ただ、宝石は粉々に砕けて辺りに散らばった。

「なんだ、魔法か?!こいつ、魔女か?!」

「やべえ、魔女だ、殺せ!」

別の男が腰から剣を抜き振り上げる。
私は身構え、反射的に目を閉じた。

だけど一向に衝撃がない。
代わりにふわりと香る花の匂いが鼻を掠めて、私は恐る恐る目を開ける。

「魔女の何が悪いの?未だにそういうことを言う輩がいるから肩身が狭いのよ。」

そんな声が聞こえたかと思うと、目の前の男達は眠るようにその場に倒れた。

何が起こったのかわからず私はただただ立ちすくむ。

「大丈夫?」

声をかけられようやく我に返ると、女性が心配そうな顔でこちらを伺っていた。