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数日後の夜遅く、私はこっそり部屋を抜け出し、アズールの部屋へ赴いた。

コンコンとノックをすると、アズールが驚いた顔をしてすぐに部屋へ招き入れてくれる。

「ナコ?こんな夜更けによくここまで衛兵に見つからずに来たな」

アズールが驚くのも無理はない。
アズールの宿舎は城内にあるとはいえ、王族の建物とは別のところにあるのだ。夜間は特に警備が厳しくなる。もちろん、王族のいる建物の方のことなのだが。

しかし、私を舐めてもらっては困る。
毎回アズールと侍女の目をすり抜けて図書館へ通っているのだ。平和なこの国の警備は、なかなかに甘い。

いや、よくないとは思うけどね?
でも防犯カメラが付いてるわけでもなく、ただ衛兵が立っているだけ。太い柱の影に隠れながら忍者のようにすすすと簡単にすり抜けられる。

私の話を聞いて、アズールは深いため息をつきながら額を押える。

「ナコ、あまり無茶はしないでくれ」

「だって昼間はアズールは騎士隊の仕事でしょ。私も図書館で仕事してたし。なかなか話せる機会がなかったのよ」

「はあ、騎士隊の名が聞いて呆れる」

なぜかアズールは反省を始めた。
鍛え直さねばなどとぶつぶつ言っている。

いやいや、鍛え直されると抜け出せなくなるからこのままがいいんだけどなあ。