「母は一人で食堂を経営していて、父は幼い頃に亡くなったから覚えていないんだ」

「そうなの、聞いちゃってごめんなさい」

「いや、気にしないで。僕は書士として国の仕事をして、そして立派になって母を楽させたい。それが僕の夢だよ」

「ジャンクって偉いのね」

「ありがとう。今度食堂へ招待するよ。母のオムレツは最高に美味しいんだ」

「わあ、楽しみ!」

ジャンクの話し方はいつも穏やかで柔らかい。
包み込まれるような会話からはまったく悪意は感じられなかった。

(いいやつなんだよね、ジャンクは)

そう思ってジャンクを見つめる。
視線を感じたジャンクは甘く微笑んだ。

「シャルロット、君といると何だか落ち着く。波長が合うのかな?」

「そう?お互い本が好きだし、同じ金髪だし、似た者同士なのかもね?」

「はは、確かにね」

この世界の住人の髪の色は多種多様だ。
私とジャンクは金色。
アズールは銀色。
侍女は栗色をしている。
だから髪の色だけで魔女だとは見分けはつかない。

(うーん、難しいなぁ)

一人考え込む私に、突然ジャンクが言う。

「シャルロット、好きだよ」

「……ありがとう」

私が軽く微笑むと、ジャンクは満足そうに笑った。