「はい、タオル」


「ありがとう、お母さん。お腹空いた~」


家のトレーニングルームで筋トレをしながら正孝が言った。


「仕事で疲れてるのに…もうそろそろ切り上げて食事にしてね」


「少しの時間でも体を動かしたいんだ。今日は何?」


正孝の体は祐誠さんそっくり。


細身で高身長。


筋肉の付き方まで似て、まるでお父さんを意識して作り上げてるみたい。


上半身裸でのトレーニング姿は、一瞬祐誠さんかと見間違うことも多い。


「今日はお義父さんが送って下さった新鮮な真鯛よ。お刺身と塩焼きにしたから。早く食べましょ」


「いいね。おじいちゃんは鯛が好きだよね」


「ええ。この時期は桜鯛って呼ばれておめでたいんだから。きっと、正孝に食べてもらいたいんだよ。おじいちゃん、会社で頑張ってる正孝のこと誇らしいって…いつも言ってくれてるしね」


ちょっと照れたような仕草をする正孝。


「まだまだ半人前だからね」


そう言いながら、正孝はサッとTシャツを着て、手を洗いに洗面台に向かった。