「ねえ、お母さん。あっちでパン食べよ」


正孝が私を呼びにきた。


「そうだね。あんこさんのパン食べたいね」


「うん! お兄ちゃんも一緒に食べよ」


「お兄ちゃん…?」


慧君は初めて会った正孝にそう言われて、ちょっと驚いてた。


「お兄ちゃん、お母さんのお友達でしょ?」


慧君は、正孝のその言葉にゆっくりうなづいた。


そして、姿勢を低くして、


「うん、そうだよ。君のお母さんは…お兄ちゃんのとても大切なお友達だよ」


そう噛み締めるように言った。


正孝はニコッと微笑み、私の手を引いて祐誠さんのところに連れていった。


久しぶりに食べるあんこさんの料理。


私達のお祝いも兼ねて、心を込めて作ってくれたって。


本当に本当にすごく美味しくて…


みんなの笑顔を見てたら、何だかちょっと…泣けてきた。


慧君の幸せ…


あんこさんの幸せ…


私は、ずっと祈ってる。


雄大な北海道の地で、大切な人達と綴った素敵な思い出。


その思い出は、二度と忘れられない大切な宝物として、深く心の中に焼き付けられた。