1年経って、ようやく俺は自分の気持ちに正直になれた。


…と、思ってる。


初めて『杏』の店内に入って、久しぶりに雫の顔を見た。


可愛い笑顔はあの時のままだった。


同じ空間に彼女がいる。


例え短い時間であったとしても、ほんの少しだけ会話するだけで…


それだけで、俺は身も心も癒された。


1年という長い沈黙の間に、彼女は特別過ぎるくらい大切な存在になってしまってたんだ。


社長としての重責を果たすためには、女性との恋愛など有り得ないと信じていたのに…


今は、雫の笑顔がないと自分が上手くコントロールできない。


反対に、彼女の笑顔があれば不思議なくらい力が湧いた。


もっと早く素直になれば良かったと、情けない程に後悔した。