その自信はどこからやってくるのだろうか。わからない。けれど、私にはまだ思い出せていない記憶があることは自覚した。

私は気を取り直して、もう一度まだ空白が少しある、あの頃の記憶を思い出そうとする。

家事が得意で堂々と優等生だった私。そんな私を、無理をしているのではないかと心配しながらも、関わってくれていた母や陽果や七生。浮気をしていたという父。

今、思い出せているのはそれぐらい。美華吏の記憶はどこにも見当たらない。

「ねぇ、本当に思い出せれるの?」

「百パーセントとは限らないけどさ、清加ならきっと思い出せる」

迷いもなく美華吏は言う。きっと私がいくら不安を口にしたって、その自信を曲げようとはしてくれないだろう。

そもそも美華吏から直々に伝えてくれればいいのに。彼はどうして、まわりくどく言ってくるのだろうか。

「宇高君からは教えてはくれないの?」

「ああ。その時はまだ早い。それに自分の空白は自分で見つけるもの。そうだろ?」

わかってはいた。ここでいくら言っても美華吏は話してくれないと。

やっぱり美華吏は不思議な人だ。だけど、自分の空白になっている、記憶の最後の人欠片ぐらいは、自分で思い出さないといけないもの。確かにいつまでも人に頼っていては大人になれない。

私は頭にクエスチョンマークを浮かべながらも、掃除の終わりを告げるチャイムがなったので保健室をあとにした。