この曇り空は私と似ていた

七生はわかるわかると頷きながらそう言った。

もうそんなに時が経ったのか。美華吏が転校してきた十月中旬は、たったの一ヶ月前のはずなのに、すでに遠い思い出のよう。

思えば最初は、私の心を見透かしてきたような言葉を言ってくるもんだから、心臓が口から飛び足すかと思った。

あれからいじめが起こって、自己嫌悪な私は弱くて、早々に自殺しようとしていた。

そんな私を助けてくれて、長所を教えてくれた美華吏。母が教えてくれた、私の中の空白であった記憶を思い出せた今なら、私に大切なことを教えてくれようとしてくれていたことがわかる。

私は佳奈達にいじめられて、本当におかしな話だけど、よかったって改めて思った。

それはさておき、陽果と七生も私が記憶喪失だったことを知っているのだろうか。いや、知っていたとしても覚えてくれているのだろうか。答えはわからない。けれど、二人は小学校から一番仲良しだった幼なじみ。きっと知っているだろう。

「私ね、思い出したの」

私はぽつりと呟くようにそう言った。

「それって……記憶のこと?」

七生はきょとんとした顔から、信じられないとでも言うような顔に、ころっと変えながらそういった。

そのことに心底、胸を撫でおろす。

「あっ!小四の頃、頭打って記憶なくしちゃったこと?」

陽果は七生の言葉を聞いて、思い出したように大きな声で言った。