母は私が差し出したティッシュで涙を拭いながらそう言った。

私はいつの間に自分の個性という色を見失っていたのだろう。まるで埋められたまま、長年忘れ去られていたタイムカプセルのよう。

そんな私の眩しい過去をどうして母は五年も話してくれなかったのだろうか。

いや、母は私が聞いてくるのを待っていたのかもしれない。そうじゃなければ、心から本当の私に気づくことはできなかったと思う。

「あの頃の清加はね、優しすぎて真っ直ぐでその上優秀で理想の娘だった。けれどひとつだけ欠点があったの」

母は真剣な目をしながらも、穏やかな口調でそう言った。

あの頃の私には話を聞く限り、いい所しかないような気がする。

私は首を傾げた。

「いつも誰かのためにって無理しすぎよ。正直、いつか壊れちゃうんじゃないかって心配してた。だからまた無理しすぎないように五年も隠してたの」

母はそう言ってからまた溢れてきた涙を拭う。

あの頃の私は人間はいろいろ溜め込むといつかは壊れるって、わかっていたはずだった。だから愚痴を聞いたり、気を使って行動していた。けれど、本当にわかりきってなかったのは私自身だったんだ。

瞳からはまた雫が溢れ出してくる。私はもう一枚ティッシュを取り出し、それを拭った。