普段の学校はいつもさわがしくてそれに苛立ちを覚えていたからだ。

立ち入り禁止に甘えているのか手すりはなく、自殺には絶好の場所だと思いながら屋上の縁に足を置いた。

下を見れば私の学校の象徴でもある紅葉した楓の木が爽やかな風に揺られていた。

私はひとつ呼吸をした。それからどんよりとした曇り空を見る。この曇り空は似ている。自分のことが大嫌いな私と。

最後に見る空がこの曇り空でよかった。一番好きな空模様だから。これで心置きなく人生を終えれる。

私はまたひとつ呼吸をした。それから足元を見つめる。

恐怖は不思議なほどにこれぽっちもありゃしない。人生に別れを告げれる嬉しさと喜びの方が断然大きかった。

けれど心の片隅には悲しみがあった。美華吏とはもう会えないからだ。

最後に別れでも告げて置けばよかったな。

心置きなく人生を終えれると思っていたのに今更のようにそんな後悔が生まれてきて、私は寂しくなる。

けれど、いつまでもこうしてるわけにもいかない。誰かに気づかれてしまったら、せっかく決めた決意を踏みにじんでしまうことになるからだ。

自然と息を止めた。

右足を宙に投げ出し、飛び降りようとする。

さよなら、大嫌いな私。優しすぎる美華吏。

足が屋上から離れようとする。

その時、誰かに腕を捕まれたような感覚がした。