この曇り空は私と似ていた

私は何か手がかりはないかと、ピアノをいろんな方向から見てみた。

もちろん、そんなのあるわけない。どこにでもある普通のアップライトピアノだ。

夕方というタイムリミットは近い。刻一刻と腕時計の針は進んでいく。焦らなきゃいけないのはわかっている。

私はピアノのふたを開けてみたり、引き出しを開けてみたりして手がかりを探した。

そして楽譜立ての裏を覗いてみた時にそれは見つかった。

一枚の写真だ。

二種類の花が一面に咲いている花畑。その真ん中にはなんの変哲もないアップライトピアノがあり、それを弾いている少年を撮った写真。

それを見た途端、瞳からは涙が溢れだしていた。

私はとても大切な記憶を、そして不思議な美華吏の正体を、やっと思い出したのだ。



____時はまた、五年前に遡る。

ある日の夏の夕方。リビングでは相変わらず父の浮気による、母との喧嘩が勃発しようとしていた。

私はというと、ある少年と一緒に階段の途中で怯えたように座り込んでいる。そして息を殺し、聞き耳をたてていた。