この曇り空は私と似ていた

だから今はこうして、部屋に一人、うずくまっている。

こんなことしてる場合ではないのに。

気づけば、私の瞳からは悔し涙が出ていた。それが頬を伝っていく。

途方に暮れていた、その時だった。

ピアノという言葉が頭に浮かんだ。

きっと昨日のことを思い出したのだろう。

やっぱりあのピアノの存在は不可思議だ。

私はピアノを生まれてから一度も弾いたことがない。だから弾ける曲もない。母は幼い頃によく弾いてたと言っていたが、誰かと間違えたのだろう。

もし"あの場所"がわかってもすぐいけるように、肩掛けの黒いトートバッグの中に、最近買って貰ったスマホと、交通手段を使うかもしれないから財布を入れて、ドタドタと階段を降りる。

「清加、どこへ行くの?」

そうやって心配してくる母をよそに

「ちょっと散歩」

と素っ気なく返して私は急いで靴を履き、倉へと向かった。

壊れかけの扉は毎回外すのも手間がかかると母が言って、外しぱっなしにしていた。だからか、倉の中は外から丸見えだ。

昨日売りに行こうとしていたアップライトピアノも、次回の時に持っていきやすいように、入り口付近に置いてある。