水縹色(みはなだいろ)の春【1】

放課後、私は担任の先生と進路の相談をしていた。

「森川は本当にこの高校でいいのか?
お前の成績なら、もうちょいここから近い高校に通えると思うけど。」

「いいんです。私が選んだんだから…。」

先生は、私がわざわざ偏差値が低い遠い高校に行くことを心配していた。

だけどこれでいいんだ。

全部全部、やり直すもん…。

高校の受験まであと数ヶ月。

受験が終わって少し経てば卒業…。

案外あっという間に時間が過ぎてる気がする。

進路指導を終え帰宅しようとした時、ふと使われていない空き教室の前で立ち止まった。

ここは、るいと2人でよく授業をサボったところ。

るいとあきらが喧嘩した後にも、私と2人でここに来て話たっけ…。

もぅあまり覚えてないけど、毎日がキラキラしていて、楽しかった。

ずっとこの時間が続けばいいのにって、本気で思ってたよ。

「…ちょっと〜…、ダメだよこんなとこで。」

使われていない教室から女の声がした。

私は窓の隙間からそおっと覗いた。

「あんっ…ダメだよるい…。」

私は、ハッと息を飲んだ。

その男女は、るいと松井華で、いやらしいリップ音と鼻にかかった撫で声が教室内で反響する。

心臓が握りつぶされているかのように、息をするにも苦しかった。

私とるいだけの秘密の場所だと思っていたのに…。

不覚にも、るいと目が合ってしまい、私は今ある力全てを出して、外へと走った。

外の空気がやけに新鮮すぎて、肺に直に感じた。

もうすぐ秋が終わりを告げようとしている黄昏時の中、私はひたすら泣いた。

それは何に対しての涙かわからなかった。

いや、わかりたくなった。

現実を受け止めるのが嫌で。

涙でぐしょぐしょになった私の頬を、冷たい風が容赦なく吹きつける。