初子は、越野支店長に好意があるのだろうか。初子の男性慣れしていないところを見ると、不倫関係だったというのは邪推のし過ぎだ。しかし、初子が淡い恋心を抱いていたとしてもなんら不思議はない。
越野支店長はうちの叔父と同じく、初子の家族にとっては恩人。どういう経緯かわからないが、初子は深い忠誠心を抱いている。いや、ずっと一緒に働いてきた分、より越野支店長への想いは強いだろう。
それなら、初子が離婚したがっても仕方ないことなのかもしれない。他に好きな男がいるなら、恋が叶わなくとも傍にいたいのは当然だ。そして、俺に肌を許さないのも操立てなのかもしれない。
しかし、初子は俺の妻なのだ。さすがにそこまで他の男に懐いていると、面白くない。
「初子」
「はい、なんでしょうか」
声をかければ、すぐに立ち上がり俺の傍に歩み寄る初子。忠犬のようでも軍人のようでもある。しかし、そこには越野支店長に見せたような親愛はない。
「今夜、夕食を一緒に食べないか?」
「……はい。お店を手配いたします。ご希望はございますか?」
いきなりの誘いに驚きながらも対応してくる。普段、平日の夕食は帰宅時間も違うのでほとんど別だ。
「いや、……初子の手料理が食べたい」
「え……あ、はい」
初子は戸惑った顔をしている。初子の作る食事は朝食以外食べたことがないのだから、驚いても無理はない。
「なにか……食べたいものが……あれば……」
ああ、そんなに困った顔をするな。俺は妻の手料理が食べたい気分であって、けして初子を困らせたいわけではないんだ。嫉妬しているわけでも……ないと思う。
「なんでもいいぞ。いつも味噌汁やおにぎりは美味いからな。味は期待してる」
初子はうろうろと視線をさまよわせ、やがて小さな声で「はい」と答えた。
越野支店長はうちの叔父と同じく、初子の家族にとっては恩人。どういう経緯かわからないが、初子は深い忠誠心を抱いている。いや、ずっと一緒に働いてきた分、より越野支店長への想いは強いだろう。
それなら、初子が離婚したがっても仕方ないことなのかもしれない。他に好きな男がいるなら、恋が叶わなくとも傍にいたいのは当然だ。そして、俺に肌を許さないのも操立てなのかもしれない。
しかし、初子は俺の妻なのだ。さすがにそこまで他の男に懐いていると、面白くない。
「初子」
「はい、なんでしょうか」
声をかければ、すぐに立ち上がり俺の傍に歩み寄る初子。忠犬のようでも軍人のようでもある。しかし、そこには越野支店長に見せたような親愛はない。
「今夜、夕食を一緒に食べないか?」
「……はい。お店を手配いたします。ご希望はございますか?」
いきなりの誘いに驚きながらも対応してくる。普段、平日の夕食は帰宅時間も違うのでほとんど別だ。
「いや、……初子の手料理が食べたい」
「え……あ、はい」
初子は戸惑った顔をしている。初子の作る食事は朝食以外食べたことがないのだから、驚いても無理はない。
「なにか……食べたいものが……あれば……」
ああ、そんなに困った顔をするな。俺は妻の手料理が食べたい気分であって、けして初子を困らせたいわけではないんだ。嫉妬しているわけでも……ないと思う。
「なんでもいいぞ。いつも味噌汁やおにぎりは美味いからな。味は期待してる」
初子はうろうろと視線をさまよわせ、やがて小さな声で「はい」と答えた。



