独占欲に目覚めた次期頭取は契約妻を愛し尽くす~書類上は夫婦ですが、この溺愛は想定外です~

その晩、俺は接待で、初子は予定通りに越野支店長と父親と三人で食事に行った様子だ。
どこで何を食べたとか、どんな話をしたとか、初子は聞けば話すだろう。しかし、自分から雑談をしてくるタイプでもないし、俺も強いて聞き出そうとはしなかった。

というか、聞いたところで、この嫉妬なのか独占欲なのか、説明のつかない感情が増大するだけだと感じていた。
そこで翌日も、俺は初子とは上司と部下以上の会話も接触もしなかった。せいぜい朝食を一緒に食べたくらい。

初子は目に見えて上機嫌だ。二日目の昼食も一緒に食べに出かけていた様子。
二泊三日予定の父親たちが明日帰ってしまえば、どれほどしょんぼりするだろう。そうしたら慰めてやればいいだろうか。……それもなんとなくすっきりしない。

俺は仕事の手を止め、デスクでそんなことを考える。初子の横顔を盗み見るようにしてしまう。男らしくなくて我ながら情けない。

「連さん、父のことですが」
「ああ」
「明日の夜の新幹線で戻るそうです。その前に、食事でもいかがでしょうか」

場をセッティングしてくれと言ったのは俺だ。確か、今晩は本部の方で、研修参加者を中心に懇親会が行われると聞いた。それで明日なのだろう。

「……越野支店長は」
「お先に戻られるとおっしゃっていますが」
「越野支店長のご都合さえよければ、ご一緒にお誘いすればいい。初子には家族同然なんだろう」

初子が照れたように微笑む。

「おこがましいことですが、支店長にはひとかたならぬご配慮をいただいていますので」