「初子さんは仕事も完璧で、本当に良い部下です。妻としても、あれこれと気遣ってくれ、助かっていますよ」
「連さんはなんでもおひとりでできてしまうので、私はやることがないくらいなんです」
謙遜ではなく、どうも本気でそう言っているらしい初子に、念のため付け足して言う。
「初子は自己評価が低いぞ。俺はいつも、本当に助かっている」
でも、と口ごもる初子に、越野支店長が明るく破顔した。
「梢、いや初子くん、元気そうで安心したよ。文護院常務の元、多くのことを勉強させてもらいなさい」
「はい!」
初子が越野支店長を見上げる。その横顔は、ものすごく無邪気で嬉しそうだ。
初子のことは燕だとかフェレットだとか、ともかく小さな生き物だと思ってきた。しかし、今の初子は飼い主相手にしっぽをぶんぶん振っている子犬に見える。忠義と愛。そんな感情がはっきりとわかる。
父親に会えたことも嬉しそうだが、越野支店長を見る目は女のそれにさえ思えた。
越野支店長は既婚で子どももいたはずだが、もしかして初子と道ならぬ関係にあったのだろうか。そんなことまで疑わしくなってしまう。
「初子、案内が終わったら、メール対応を頼む。本部総務からコンプライアンス調査の件で連絡がきているはずだ。俺は、下で渉外課長と打ち合わせをしてから戻る」
「承知しました」
「越野支店長、梢さん、午後の視察と研修は私も顔を出します。よろしくお願いします」
挨拶を済ませ、俺はその場を離れた。初子のはしゃいだ様子、あどけない笑顔。頭から離れない。
初子は俺に心を許していない。夫婦になれないどころか、上司と部下の関係性としても越野支店長に及びもしない。
こんな落ち着かない気分になるなんて、考えもしなかった。
「連さんはなんでもおひとりでできてしまうので、私はやることがないくらいなんです」
謙遜ではなく、どうも本気でそう言っているらしい初子に、念のため付け足して言う。
「初子は自己評価が低いぞ。俺はいつも、本当に助かっている」
でも、と口ごもる初子に、越野支店長が明るく破顔した。
「梢、いや初子くん、元気そうで安心したよ。文護院常務の元、多くのことを勉強させてもらいなさい」
「はい!」
初子が越野支店長を見上げる。その横顔は、ものすごく無邪気で嬉しそうだ。
初子のことは燕だとかフェレットだとか、ともかく小さな生き物だと思ってきた。しかし、今の初子は飼い主相手にしっぽをぶんぶん振っている子犬に見える。忠義と愛。そんな感情がはっきりとわかる。
父親に会えたことも嬉しそうだが、越野支店長を見る目は女のそれにさえ思えた。
越野支店長は既婚で子どももいたはずだが、もしかして初子と道ならぬ関係にあったのだろうか。そんなことまで疑わしくなってしまう。
「初子、案内が終わったら、メール対応を頼む。本部総務からコンプライアンス調査の件で連絡がきているはずだ。俺は、下で渉外課長と打ち合わせをしてから戻る」
「承知しました」
「越野支店長、梢さん、午後の視察と研修は私も顔を出します。よろしくお願いします」
挨拶を済ませ、俺はその場を離れた。初子のはしゃいだ様子、あどけない笑顔。頭から離れない。
初子は俺に心を許していない。夫婦になれないどころか、上司と部下の関係性としても越野支店長に及びもしない。
こんな落ち着かない気分になるなんて、考えもしなかった。



