独占欲に目覚めた次期頭取は契約妻を愛し尽くす~書類上は夫婦ですが、この溺愛は想定外です~

俺はデスクで、初子の淹れてくれた紅茶を手に仕事の続きをすべくとパソコンに向かう。しかし、どうしても集中できない。
そうだ、渉外課長に確認したいことがあったんだ。普段ならここに呼びだすが、俺が向かったって障りはない。ついでに初子の父親に挨拶をして行こう。

階段で二階に降りると、廊下の奥のミーティングルーム前に、ちょうど初子たちの姿が見えた。一階から上がってきたばかりのようだ。

心臓が跳ねた。
初子が笑っている。見たこともないくらい満面の笑みだ。その笑顔は父親と越野支店長に向けられていた。話し声も聞こえるが詳細はわからない。

一瞬気おくれしたが、俺は構わずに近づいた。

「ようこそ、おいでくださいました」

笑顔を作って声をかけると、三人が俺の姿を見て揃って頭を下げた。

「文護院常務、この度は視察と研修へのお招きありがとうございます。そして、ご結婚おめでとうございます」

越野支店長とは仙台支店での視察の際に食事を共にしたことがある。初子の父親が頭を下げたままで言う。

「梢でございます。ご挨拶が遅れまして申し訳ございません。娘はお役目が務まっておりますでしょうか」
「越野支店長、ご無沙汰しております。梢さん、ご挨拶もないまま初子さんをもらい受けるという粗相、誠に申し訳なく思っております」

ふたりは俺と初子がどういう理由で一緒にいるか、叔父から聞いているはずだ。特に初子の父親の梢氏には、契約の条件が開示されている。そうでもなければ、娘をこんな形で嫁に出すことに了承する親はいないだろう。