独占欲に目覚めた次期頭取は契約妻を愛し尽くす~書類上は夫婦ですが、この溺愛は想定外です~

七月半ばに差し掛かる頃、ようやく出張が落ち着いた。しかし、今度は本店営業部で研修の名目で、地方支店から行員がやってくる日々のスタートだ。会議や研修の立ち合いなど、業務は増え、忙しいことには変わらない。

「連さん、紅茶をお淹れしました」

俺のデスクに紅茶を準備してくれる初子。
初子は随分俺を助けてくれている。支店長決済のいるような書類は別として、メールの整理やスケジュール管理、資料作成を一手に引き受け、本部とのやりとりも代行できるところはしてくれている。ありがたい限りだ。部下として優秀すぎる。

さらには、こうして絶妙なタイミングでお茶を出してくれ、俺に休憩を勧めてくる。よく見てくれている。できた秘書であり、できた妻だ。
忙しさは変わらなくても、初子が近くにいてくれるだけで、癒される部分も大きい。

「初子、ありがとう。そうだ、今日の午後から、親父さんと仙台支社の越野支店長が来るぞ」

俺が言うと、初子はふわっと顔をほころばせた。自然な笑顔に驚く。

「はい、父から連絡をもらっています」

本店営業部視察、研修に初子の父親と、元上司の越野支店長が来ることは、初子もすでに知っている様子だ。まあ、当然か。初子は仙台に残してきた父親と妹をとても大事にしているようだ。たまに妹と電話をしているし、ふたりからの宅急便は頻繁に届く。