独占欲に目覚めた次期頭取は契約妻を愛し尽くす~書類上は夫婦ですが、この溺愛は想定外です~

「今日も話があるだろうが、海外需要に応えるためと、老朽化から、新工場はどうしてもほしいそうだ。経営体力はある会社だ。数字だけで見ず、今までとこれからの信用を担保に融資を許可したいと思っている」

言葉を切り、苦笑いして見せる。

「文治は大きくなっていく最中だ。身を肥やすために、切り捨てるものを多くしては、銀行の本来の在り方を見失う。信用は何よりの宝だよ」

俺の言葉に初子が目を瞠った。

「まあ、こういうところが甘いと言われて、後継者に不適格だなんて陰口たたかれるんだけどな」
「いえ、連さんのお人柄を尊敬します。あらためて、過ぎた口を聞きました。お許しください」

頭を下げる初子は、控えめだが、全体を見る目を持っている。
俺が妻に望んだのは一緒に考えてくれる女性、意見してくれる女性だ。初子は経営者の妻に相応しい。
彼女さえよければ、このまま夫婦としてやっていくことが一番いいように思える。
金曜の件はなんとしても挽回して、初子の心を取り戻さなければならないだろう。