「初子は俺が淹れた美味い紅茶がいつでも飲めるぞ」
「それは……嬉しいですが」
「洗濯物も俺がしてやろうか。畳むのは結構好きなんだ」
「いえ! そんなことはさせられません!」

初子がぶんぶんと手も首も振りまくる。ものすごく困っている様がとても可愛いと思う。

そう、俺は最近、新妻が可愛いのだ。
初子が、今までにないタイプだから面白いということもあるだろう。
恋かと言われると、正直よくわからない。まったく懐かない小動物に懐いてほしい気持ちの方が強いかもしれない。

しかし、せっかく妻として隣にいるのだ。一番身近にいる“家族”と仲良くなりたいのは自然な心理でもあると思う。そこで、俺は積極的に初子に近づくことにしている。

「あの、連さんは私と同居で、気詰まりではありませんか?」
「まったく気詰まりじゃないぞ。公私ともに支えてくれるのはありがたい」
「ですが……、連さんが後継者に指名されれば、解消する関係ですし……」
「俺は別に解消しなくてもいいぞ」

にこにこ答える俺に、初子は狼狽している。
普段冷静で真面目な彼女は、俺の言動に簡単に揺さぶられ、平常心ではいられなくなる。上司であり夫であり、契約相手だものな。
そこに俺は付け込むというわけだ。