独占欲に目覚めた次期頭取は契約妻を愛し尽くす~書類上は夫婦ですが、この溺愛は想定外です~

駄目だ。格差にめげている場合ではない。これも大事な連さんの妻の仕事。
私は求められるままに何着も衣装に袖を通し続けた。シフォン素材のブルーのワンピースに決定すると、そこから撫子さんと真緒さんがメイクとヘアスタイルをいじってくれる。

「難しいアップスタイルは美容師にお願いするけれど、簡単なものは自分たちでやってしまうのよ」
「今度、お着物の着付けも教えるわ」

撫子さんと真緒さんは、私を連さんの妻として恥ずかしくないようにしてくれているのだ。師匠と思ってついていかねばならない。

「どうかしら!」
「いい感じだと思うわ!」

ふたりに仕上げてもらったスタイルを鏡に映す。
瞬間、どきりとした。
しっかりと化粧を施した私の顔立ちに見覚えがあったからだ。記憶の奥底にある懐かしい……忌まわしいその姿。
ごくんと知らずに息を呑んでしまう。
ああ、こんなにも似ているなんて。

「初子さん?」

呼ばれて、私ははっとふたりを振り返った。いけない。妙なことを考えていた。

「あ、ありがとうございます。こんなにお手間をかけさせてしまって」
「いいのよ、楽しかったもの」
「兄さんをあっと言わせてやりましょう」

私は上機嫌のふたりに手を引かれ、庭に戻ることとなった。ふたりのこだわりのおかげで、衣装選定とメイクアップが長引き、パーティーはすでに始まっている。