独占欲に目覚めた次期頭取は契約妻を愛し尽くす~書類上は夫婦ですが、この溺愛は想定外です~

「さあ、服はいくつか選んであるの。私のものを貸す形でごめんなさい。今度、兄さんに言ってもっといいものを買わせるわ」

撫子さんが張りきった口調で、がらがらとハンガーラックを押してくる。私のために、運んでくれたのだろうか。力仕事は、お手伝いさんだろうか、それとも恭さんだろうか。どちらにしろ、申し訳ない気持ちになる。

「初子さんは色が白くて肌が綺麗だから、淡い色もいいわね」
「こっちのワンピース、いいと思わない? あら? 真緒さんこういうの持ってなかった?」
「一昨年のコレクションで。でも、思った感じじゃなかったから、一度着たきりなの」

ふたりはぺらぺら喋りながら、私にワンピースをあてがう。パッと見、どれも一着数十万単位の衣装だろう。私が持っているスーツ以外の洋服で、一番高いワンピースが二万五千円だと言ったら、彼女たちはどう思うだろう。

「さ、これ着てみて。その後はこっちよ」
「初子さん、顔立ちが愛らしくて少女のようだから、メイクとヘアスタイルは大人っぽくしましょうか」
「ふふふ、父さんのパーティーなんかほうっておいて、このままここで女子会にしてしまいたいくらい」

すごく楽しそうなふたりに、ついていけない。
これがこの人たちの普通のことなのだろうか。

私と妹の美雪のお茶会は、マグカップにココアを入れてコンビニのミニパックのお菓子を片手に、どちらかの部屋に集まってビデオオンデマンドサービスで映画やドラマを見るくらいで……。
洋服も、どちらかが買ったものを「今度貸して」とかそのくらいで……。