独占欲に目覚めた次期頭取は契約妻を愛し尽くす~書類上は夫婦ですが、この溺愛は想定外です~

「今夜は中華が食べたいんだ。ひとりで行くのもなあ。初子が付き合ってくれたら嬉しいんだがなあ」

ちらちらと私を見てからかうような口調で言う。
うう、断りづらい。私は冷や汗をかきながら頷いた。

「はい、お伴いたします」
「ありがとう、初子」

交渉が成功したせいか連さんはすっかり笑顔だった。

「そうだ。来週末は予定を空けておいてくれ」

不意に言われ、私は頭の中でスケジュールを思いだす。公的な用事は入っていなかったはずだけれど。

「幼馴染の父親の誕生パーティーなんだ。親しい人間ばかりだが、初子を妻として紹介する機会になると思う」
「え!」

思わず声をあげてしまった。寝耳に水だ。来週末にパーティー。連さんの妻として……。

「あの、どのような服装で行けば……」

普段はダークスーツ、今も襟の詰まったシャツに膝丈のスカートという出で立ちだ。そういった服では参加できないだろうことはわかる。

「そうだな。この前は俺がプレゼントするから撫子を頼るなと言ったんだが、今回は撫子に任せてある。身内のパーティーに女性がどういった格好をするか、男の身からするとわかりづらいものでな。ガーデンパーティーなんだ」

なるほど、ホテルで行われるようなパーティーであれば、夜会用のドレスを選べばいい。しかし、日中に行われるガーデンパーティーで身内が中心となると、男性には見当が付かないかもしれない。というか、私にも見当がつかない。

「普通の服装でいい。撫子と幼馴染でホスト役の真緒(まお)が準備してくれるはずだ」

真緒、その女性の名前を聞いて、私は連さんの幼馴染が女性であることを知った。勝手に男性だと思っていた。

「承知しました」

私は返事をし、手を付けられずにいたタルトにようやくフォークを入れた。