「一緒に食べよう。今日はトレッドミルで結構走ったから、甘い物が食べたくてね。これでも普段は我慢してるんだ」
「健康に気を遣われているんですね」
「人並には、ってところだな。チョコ菓子とかポテトチップスとか、食べ始めると止まらなくなってしまう。だから、家には置かないようにしているし、食べるときはこうして初子と一緒にしようかと思ってる」
「ブリトーや肉まんもお好きなんでしたね」
「そうなんだよ。最近は一年中あるだろ? ああ、思いだしたら食べたくなってきたな」

そう言って笑う顔は、ほれぼれするくらい男前だ。
過分な配慮はいらないと何度言っても、彼は私をそれなりに扱いたいようだ。お菓子や花などのプレゼントはしょっちゅうだし、こうして余暇を割いてコミュニケーションを取りにきてくれる。
育ちの良さからくる穏やかさと優しさがあり、契約妻の部下にも窮屈な想いをさせないように心を砕いてくれる。
見目もよく、性格もよく、地位もあるこの人の妻が自分であるということが、つくづく申し訳ない。
これも、仕事。連さんが私でいいと思ってくれている以上、限られた時間の中でお役目を果たしていかねば。