俺は初子の手からマカロンの小箱を取り上げた。箱を開け、黄緑色のものをひとつ自分の口に押し込む。さらにピンク色のマカロンを、初子の唇に押し付けた。
初子は驚いた顔をしつつも、即座に口を開けマカロンをぱくっと受け取った。部下の反射神経といったところか。
困った顔でさくさくマカロンを咀嚼しているところがやっぱり小動物みたいだと思いながら言わないでおく。

「マカロンは一緒に楽しんだということにしよう。花束は受け取れ」
「……はい。ありがとうございます」
「プレゼントが嫌となると、おまえはどうやったら喜ぶかな」

ついつい苦笑いになってしまう。初子はごくんとようやくマカロンを飲み込み、こっちを不思議そうに見ている。

「あの、喜ばせなくていいのです。私は条件を提示され、契約したのですから、これ以上待遇面にご配慮いただく必要はないかと」
「おまえはそれで面白いのか? 毎日息苦しくはないか?」
「……私は今の生活に大変満足しています」

そこまで言われれば、価値観の相違でしかない。参った。ただ普通に仲良く気兼ねなく夫婦をやっていこうと思っているだけなのに。初子はそう思わないようなのだ。
すると、突然初子がはっとした顔になった。

「連さん」