仕方ないことではあるが、少々虚しさもある。せめて、もう少し家族らしい関係になりたいのだが、そう思っているのも俺だけだろうか。
肉体関係を持ってしまえば……という作戦は大失敗だった。それなら、距離を縮めるには何がいいだろう。
月並みだが、プレゼントなどはどうだ? 女性と会うとき、花やスイーツなど簡単なものをプレゼントすることはままあるが、初子はああいったものは喜ぶだろうか。俺が接してきた女性たちとはタイプが違うため、いまいちわからない。

まあ、いい。物は試しだ。俺は本部に渡す書類を作り終えると、気軽な身なりで外に出た。
だいたいのほしいものは、このあたりの複合施設で揃う。俺のマンションは都市型複合施設の一部のレジデンシャルタワーにあるのだ。

初子にはどんな花が似合うだろう。イメージとしては紫陽花やキキョウ。青っぽい花なんだが、プレゼントするならもう少し明るい色がいい。
ベーシックにピンクの薔薇のミニブーケをこしらえてもらい、有名パティシエの店舗でマカロンをたくさん買って戻る。初子には帰宅したら、俺のところへ寄るように連絡しておいた。

十九時過ぎに、初子は帰宅した。
自室に戻る前にまっすぐ来たようだ。玄関先で初子は部下らしくぴしっと直立している。

「遅くなり、申し訳ございませんでした」
「いや、いいんだ。撫子に一日付き合わせてすまなかった」

室内に招こうか迷い、この前のことを考え、自重した。初子を玄関で待たせ、すぐに花束とマカロンを持ってくる。