独占欲に目覚めた次期頭取は契約妻を愛し尽くす~書類上は夫婦ですが、この溺愛は想定外です~

俺と初子の近居新婚生活はこうして幕をあげた。
公の結婚報告は来月の役員会議。本部と本店営業部では頻繁に会議をしているが、来月は四半期決算の関係で全国の支店から責任者が集まる。その場で報告する予定だ。
個人的な報告になるが、文治で現在後継者と目されている俺の結婚は、公的な側面が強い。結婚式の予定は未定だが、入籍報告だけでも牽制になるだろう。俺が頭取になることを良く思わない連中は、ひいては叔父の経営すら揺るがしかねない者たちと言える。

初子とは、一度拒否されてからは距離を保っている状態だ。なにしろ、相手は推定処女。簡単に手を出すのはいけない。
初子が心を許してくれるのを待つ以外にないだろう。
そうして結婚から半月、五月も終盤に差し掛かる頃となった。



「連、こっちだ」

五月後半の日曜、俺は六本木のブライダルサロンを訪れていた。
吹き抜けのホールに設けられたカフェスペースで、俺に片手を上げたのは小椋恭。俺の友人にして未来の義弟。撫子の婚約者にあたる男だ。

「休日にこんなところに来なきゃならないなんて新郎は大変だな」

言いながら近づくと、恭が爽やかに笑った。

「それは連もだろう」