独占欲に目覚めた次期頭取は契約妻を愛し尽くす~書類上は夫婦ですが、この溺愛は想定外です~

「仕事ぶりがいいと連が褒めていたよ」
「ありがとうございます」
「期待した通りだ。生活の上で、不便はないかね」
「叔父様、あまり前置きを長くせずにお願いしますね」

横から撫子さんが口を挟み、頭取は咳払いをした。本題に移るようだ。

「梢くん、今日呼びだしたのは、きみの業務についてだ。異動してもらった真の意味といってもいいかもしれない」

きた、と思った。良い話か、悪い話か。ごくんと生唾を飲み込む。
頭取が私を真っ直ぐに見て言った。

「甥の連と結婚してほしい」

……結婚?

いい想像と悪い想像をひとつずつしていたんだけれど、これはどちらでもないぞ。
結婚? 結婚って連さんと?
私はうろたえ、言葉を探し、そろりと首を右に傾げた。

「あ……え、あ、と、その……」

動揺し過ぎて返事が上手くできない。頭取が私の言葉を待たずに熱心に言う。

「驚かせてすまない。きみの人事は最初から、連の花嫁としてのものだ。公私ともに連を支えてほしくて本店営業部に呼んだ。きみの営業成績、勤務姿勢、容姿、健康状態などから総合的に選らばせてもらった」
「え、……あの……」
「初子さん、私と頭取には、兄を結婚させたい理由があるんです」

撫子さんが口を開く。彼女はけして居丈高な口調ではない。むしろ、私を気遣うような目線を向けてくる。