「いえ、連さんがいなかったので……。おはようございます」
「どこにも行かないよ。可愛い新妻を置いて」

途端に甘く幸せな感情が心と身体を満たしていく。現金なものだ。今度は、恥ずかしくて連さんの顔が見られなくなってしまった。

連さんはそんな私を気にするでもなく、ベッドサイドのテーブルにお茶の準備を始めた。

「アーリーモーニングティーというやつだ。朝、ベッドの中で楽しむお茶だよ」

連さんはそう言って、紅茶をそそぐ。濃い紅色が綺麗。華やかな香りがする。

「わざわざ準備してくださったのですか?」
「夫が妻にしてあげることが多いからな。いつか大事な人にしてやりたいと思っていた」

にっこり微笑んでから、付け足す。

「他の女性にはやったことがない。初子が初めてだ」

嬉しくて私は頬を熱くしながら、小さく御礼を言った。紅茶を口に運ぶ。熱いお茶が冷房で冷えた身体に心地いい。
連さんはベッドに腰かけ、私の耳元の髪をかき分け、頬に触れた。

「身体はつらくないか? 無理をさせた」
「いえ……大丈夫です」

彼の大きな親指が頬をぷにぷにと触る。
それから手が耳と髪に伸びた。私はくすぐったくて左目を眇める。