八月の半ば、からりと暑い真夏日に、撫子さんと恭さんの挙式披露宴が執り行われた。
都内有数のハイクラスホテルは文治銀行とは古くから付き合いのある老舗。その一番大きな広間に、大勢の招待客がひしめく。挙式の際にウエディングドレスだった撫子さんは、今は一度目のお色直しでベビーピンクのドレスに身を包んでいる。このあと、色打掛も着る予定だと、一緒にドレスを選んだ私は知っている。

披露宴はさながら大企業の集うパーティーといった様相だ。私と連さんが挙式をしていないこともあり、より盛大な式にと頭取の意向があった。

そして、撫子さんの結婚式は、私が連さんの妻として出席する公式の場でもあった。
この日のために用意してもらった濃紺のイブニングドレスを着て、連さんの横に立つ。肩までの髪は少しだけ短くし、スッキリとした印象になるようにした。
華美なメイクは式場でほどこしてもらったものだ。鏡を見れば、やはり母によく似ていると思うけれど、もう鏡を見たくないなどと言わない。連さんは言ってくれた。私と母親は違うのだ、と。今の私の顔が好きだと。連さんの言葉は勇気がもらえる。
それに、多少なりとも見目が良い方が連さんのためにもなるなら、厭わしくも思わない。