「そんなに可愛いことを言うと毎日プレゼントを買うぞ」
「無駄遣いはおやめくださいね」
「初子が喜んでくれたというだけで、俺にはご褒美だ。毎日ご褒美がもらいたい」
「いけませんよ」

唇をとがらせ、注意してくる様は小鳥みたいで可愛い。以前よりずっと気安いムードが俺と初子に流れているのは、この前の告白があったからだろう。胸の詰まりが取れたのだろうか、初子は堅苦しい表情以外にリラックスした顔を見せることが増えた。

「さて、一日かけてあちこちショップをめぐるつもりだったんだが、もう決まってしまったな。この後の希望はあるか?」
「あの……東京にはまだ慣れませんので」
「お、メジャーな観光地にでも行ってみるか?」

尋ねるとおずおずと言う。

「お散歩などいかがでしょう」

お散歩……それは予想外だ。しかし、妻の要望とあらば喜んで案内しよう。

「では、浜離宮のあたりでも散策してみるか」

電車で移動し、浜離宮恩賜公園までやってきた。広々とした公園は都会の中のオアシス。整備された木立、遊歩道、海も近く潮の香りもする。
しかし、時期が悪い。今は八月だ。
少し歩いては自動販売機で水を買って休憩というのを繰り返す。

「初子、大丈夫か? 熱中症にならないようにな」
「はい、大丈夫です。あ、連さん、鳥ですよ。大きいですね。川鵜かな」
「うん、川鵜だな。あれも黒いが、初子のイメージはやっぱり燕だな」

初子が持参してきた折り畳み帽子の下からじとっと俺を見る。