八月頭、俺は初子をデートに誘いだした。撫子と恭の結婚式は間近である。初子のドレスこそ五月に発注してあるが、靴や小物などは買い与えていないと気づいたのだ。

何より一番の理由は、俺は結婚して三ヶ月、初子とデートひとつしていないと気づいたから。
食事に行くことはあったが、買い物やレジャースポットに出かけるようなことはなかった。根本的なところをはずしていた気がする。女性を楽しませよう、喜ばせようというテーマの中にデートは必須だったというのに。我ながら抜けていたものだ。

「本当にそれでいいのか?」

俺は初子の顔を覗き込んで言う。初子はにっこりと笑って頷いた。

「ええ、ドレスの色と合いますし、ちょうどいいかと」

初子は最初に連れていったブランドショップでさくさくとバッグとパンプスを決めてしまった。
ここは一軒目で、この後あちこち見て回るつもりだったのに。
欲がないというか、こだわりがないというか。

店舗を出た初子は、ブランドショッパーを抱え、嬉しそうにしている。腰を屈めて顔を覗く。買い物に時間をかけたくないのは俺に気を遣っているからか? デートとはそういうものだから気にするな、などなど言いたいことを選んでいると初子が言った。

「連さんに選んでいただけたのが、嬉しいです」

確かにこれはどうだと言ったのは俺だけれど、そんなふうに思っていたのか。
途端にじんと胸が熱くなる。