連さんは上機嫌だ。朝から何かしようというわけではなく、単純に私を驚かせたかったらしい。その証拠にじたばたする私をすぐに解放し、自身も身体を起こす。

「初子に好いてもらおうと、昨日決めたからな。これからはもう少し積極的にいくぞ」

にっこり笑ってそんなことを言う。好いてもらおうとは、男女としてという意味だろう。でも、今までだって充分積極的だったし、私はその都度ドキドキを必死に抑えて彼との距離を取り続けて……。ああ、これ以上なんて困る。

「連さん、お戯れもほどほどにしていただきませんと」
「初子は、俺といずれ離婚するつもりなんだろう」

パジャマ姿で立ち上がった連さんが私を見下ろして言う。

「それは初子の権利だ。だけど、俺は離婚しない方向に持っていきたい。そのために初子の心を動かそうと決めたんだ」

朝から爽やかに、だけどこの関係の根幹を揺るがす宣言をされ、私は目眩でくらくらした。そんなことあってはいけない。

「連さん、それは」
「おっとこんな時間だ。朝食を用意してくれたんだな。ありがとう、急いで食べよう」

反論の余地なく、私と連さんは出社に向けて動き出すこととなった。